〜Nowhereパンフレットより〜

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Q:まず最初の質問です。映画を作る上で、あなたが一番大切にしている事は何でしょう?

グレッグ・アラキ(以下GA):それは、新たなメタ・リアリティ(変型現実)を作り出すことです。そこに一番興味があります。そしてそれは、例え夢の世界であってもいいのです。

Q:ある人がこの映画のことを、“地獄に行った「ビバリーヒルズ青春白書」”と言いました。映画の中の若者の会話は、すべてあなたのオリジナルのスタイルでしょうか?南カリフォルニアのライフスタイルをデフォルメした印象を受けたのですが。

GA:この映画のすべては、今僕が話したメタ・リアリティの世界での出来事です。つまり登場人物全員が、メタ・リアリティの世界の住人なのです。ですから、どのシーンも、どの台詞も、みなメタ・リアリティから派生したものです。

Q:この映画は目まぐるしく展開し、悲劇、風刺、ロマンスといったものが、全て同時進行していきますが。

GA:それがティーンの良い部分で、彼らの日常は極端にドラマティックで、とどまる所を知りません。すべての事で、「生きるか死ぬか」という所まで行ってしまいます。アドレナリンとホルモンのせいでしょう。だから30歳の証券マンの映画を撮るより、彼らを撮る方が魅力的なんです。

Q:『ドゥーム・ジェネレーション』を、存在の無意味さを描いた作品と評した人がいましたが、『ノーウェア』との共通点を話して下さい。

GA:『ドゥーム・ジェネレーション』には悲壮感漂うものがありましたが、『ノーウェア』はそうではないでしょう。登場するティーンは必ずしもニヒリストではないのです。彼らは何かを信じています。よく僕の作品はニヒリズムや空虚さを描いていると誤解されがちですが、根底にあるものは、極めてロマンティックなものです。でも共通点と言えば「生の肯定」ということかな。

Q:『ノーウェア』の中の若者たちは、何を信じているのでしょう?

GA:彼らが世の中でたった一つ執着するもの、たった一つの理想、それが「愛」なんです。だから、このカオスと化した残酷で悪夢のような世の中で、ただ一人の愛する人と、どうにかして出会おうとするんです。

Q:どん底の状況の中でも、希望があるのでしょうか?

GA:ラリー・クラーク監督の『KIDS』(95)と題材は似ているかも知れないけれど、『ノーウェア』とは随分違います。それは僕の映画が、ニヒリズムに徹した映画ではなく、ポップでロマンティックな映画だからです。

Q:『ノーウェア』のビジュアル・スタイルは、観客に強烈な印象を与えます。この映画のビジュアル・スタイルの秘密について、お聞かせください。

GA:特徴としては、まずベーシックな部分で、つまり美術、衣装、照明などに関して、ある種の現実感を作り出し、次の段階で、超現実的なビジュアルへと飛躍させていくことです。それがこの映画の基本的なビジュアル・スタイルです。それは、どんなシーンにも生きていて、際立った印象を人に与えると思います。

Q:映画『ノーウェア』の出来について、あなたはどう思っていますか?

GA:『ドゥーム・ジェネレーション』より成功したと思っています。映像的にも文句なしに最高級でしょう。実は『ドゥーム・ジェネレーション』を撮った後、僕は心が解放されたような気分になりました。その解放された状況が、色々なチャンスを生み出したんです。ですから僕は、この映画を自分の最高傑作だと、自信を持って言うことが出来るんです。

Q:『ノーウェア』に出演の俳優について聞かせて下さい。

GA:これ以上カッコ良く、魅力的なキャスティングは無いと自負しています。と言うより、彼らは本当に素晴らしいんです。撮影中も、とにかく驚かされっぱなしで、一緒に何かするのが楽しくて仕方がなかった。

Q:最後の質問です。モンゴメリーには本当に光輪があるのですか?

GA:はい、本当にあります。

Q:ありがとうございました。


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